令和6年度業務研修終了の報告
地域を再生する!DAO活用による不動産金融の未来
日時 | 令和6年12月4日(水)18時30分~20時30分 |
講師 | 本嶋孔太郎(弁護士、DAO先駆者) 石井くるみ(中央支部不動産金融特別委員会委員長) |
参加者 | 31名(行政書士22名、その他〔事業者等〕9名) |
東京会支部初の不動産金融に特化した委員会
本研修の冒頭、企画者である不動産金融特別委員会委員長の石井くるみさんが委員会設置の経緯を説明しました。
中央支部は、東京証券取引所及び証券会社が軒を連ねる兜町や日銀本店を擁する金融の街、中央区に位置し、ならば金融にも明るくあるべきとして令和5年に東京会支部初となる本委員会が設置されました。
「不動産金融」に特化した理由について「街は、人が暮らし、働く場である不動産が要となって形成され、その所有や経営には巨額の資金が動く。不動産資金としての金融は社会を回していくものとして実態を把握しやすいから」と石井さん。自身、不動産ファンド化の助言を主業務としており、国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会」総括会委員を務め、地域不動産の再生にも取り組んでいます。
低コストかつ多様な価値観に応えるDAO
本研修では、空き家再生などに有効とされるDAO(分散型自律組織)を用いた最先端の資金調達を学びました。令和5年に本委員会が実施した墨田区京島の築古長屋の街づくりや資金調達スキームの研修の発展版ともいえます。
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、特定の目的のために人と資金を集め、分散型で自律的に運営されるコミュニティ的組織のことをいい、従来型のトップダウン形式で閉じられた組織と異なり、多様なステークホルダーであるメンバーが意思決定や事業遂行に直接関わることを通じて組織運営に貢献していく点に特徴があります。講師はDAO先駆者としてルールメイキングを担う弁護士の本嶋孔太郎さんが務めました。スタートアップ支援とテクノロジー分野での規制改革に取り組み、政府に提言を行うなど幅広く活動しています。
具体的な仕組みについて、本嶋さんが実践する香川県小豆島の空き家古民家利活用を例にとると、運営組織は定款による柔軟な運営が可能な合同会社型DAO。古民家利活用に参画したい人は同社の社員権をオンラインで購入し、代金がDAOに入ります。これを資金に古民家を全面改装し、一棟貸し1泊10万円の高収益宿泊施設が完成しました。株式上場や不動産ファンド化といった従来型の資金調達と異なり、低コストゆえに収益実績の乏しい古民家案件でも調達を断念せずにすむスキームです。
配当に相当するのがリワードトークン(報酬としての独自通貨)の付与で、宿泊券NFT(デジタルチケット)と交換でき、自身の宿泊での利用やNFTマーケットでの現金化が可能ですが、重要なのは現金がDAO外に流出せず、内部留保として再投資できる点が運営者やステークホルダーには魅力です。
出資者には合同会社の社員権が付与されているため意思決定にも関与し、古民家周辺の商店の充実などを実現することもできます。住民や関係人口にとっては、出資金の回収よりも地域再生の一助となることに関心が高い場合もあり、これまで見過ごされてきた多様な価値観に応える柔軟さをDAOは秘めています。出資以外の清掃や広報などでも貢献は可能で、貢献度に応じてリワードトークンが付与されます。地域コミュニティやインフラの崩壊が全国的な課題となる中、DAOは住民や関係人口の参画意欲の受け皿となり、住民・関係人口コミュニティによる地域再生を可能にする仕組みでもあるのです。
事業者の研鑽や行政書士との親交の場を創出
本研修には、相続業務で直面する空き家や民泊転用に課題を抱える会員のほか、新たな資金調達スキームを求める不動産事業者などが参加しました。本委員会の研修には、令和5年度、6年度ともに事業者の参加が少なくなく、その研鑽や行政書士との親交の場を創出していることも特筆すべき点です。
研修後の懇親会は同会場内にてノンアルコール形式で行われました。学習モードそのままに、不動産事業者や、まちづくりに取り組む不動産オーナーなどがDAO活用に関する議論を深め、自らが取り組む不動産事業における課題を相談し合うなど、実りあるひとときとなりました。
本嶋さん。
石井さん。